堕ちゆくあなたと私



雨が降る夜―――
そんな夜の真下にいる私とあなたがいる
周りには、まるで木の実のように
たくさんの人を垂らしている木が立ち並び
雨に打たれながらあなたは、地面に泣き崩れている
最愛の人に目の前で自殺され
衝撃と悲しみがあなたの中で激しく渦巻き
私の目の前で限りある涙を流している
「そんなに悲しいのであれば私と行きましょう
 自殺者が死後に向かう
 死者の大関門へ
 あなたの愛しき者を迎えに」
私の言葉を聞いて
あなたは涙を拭かずに私を見る
哀れな表情 絶望に満ちた力の無い瞳
私が一番好きな状態に陥っているあなた
そして、天使の偽りの姿をした私
あなたを死者の大関門まで連れて行き
強制的に彼女と共に地の果て叩き落される姿を何よりも楽しみにして
あなたが上げる苦しみと怒りの叫びが早く聞きたくてたまらない
悪に体や魂をすべて捧げ
人が苦しみ・絶望に陥った姿がとっても大好きな私
「ああ、行くとも
 彼女を連れ戻せるなら……
 再びこの世に蘇えさせることができるのなら
 俺はあなたの言うことを何でも聞く
 金や身分をすべてあなたへ捧げるから
 だから俺をそこへ連れて行ってくれ」
汚らしい手で私の足元に縋り付くあなた
私はあなたを蹴り飛ばし、その覚悟が本当か問い掛けた
「私に絶対服従の契約を交わしますか」
その問いにすぐさま「はい」と答えるあなたへ
私は服をすべて脱ぎ捨て 足を舐めて綺麗にするよう命じた
この命にあなたは、何の戸惑いを見せずに従い
差し出した足に口をつけた
まるで犬のよう
恥を捨て、願いのために命に従う哀れな姿をするあなたへ
周りの自殺者がいっせいに視線が向く
極度に冷たく
あまりの醜い姿を見せられた事への怒りに満ちた視線が
あなたへと大量に降り注ぐ
そんな立場へとあなたを叩き落した事に
私は笑い その時間を大いに楽しんだ

そしてあなたに絶対服従の印である首輪を付け
四つん這いで歩かせながら
私は大関門の前に辿り着いた
大関門には、愚かな自殺者がたくさんさまよい歩き
二つの関門の間で閻魔大王様が一人一人に裁きをくだしている
本当に大変そうである
「閻魔大王様の裁きを受けずに天の門を潜ろうとし
 捕まって地の果てに通じる門へ叩き込まれていく
 馬鹿で愚かな者がたくさんいれば
 閻魔大王様が楽に裁きをくだせるのに」
そんな事を考えながらもう一つある
三つ目の門へと向かう私
それを疑問視するあなた
だから私へ文句を言う度に蹴り飛ばす私
「あなたの愛しき人は、この門の向こうにいるわ
 さぁ、行きなさい
 そして連れて帰って来なさい」
首輪から繋がっている綱を投げ捨て
目の前にある三つ目の門へ行くようにあなたへ命じる私
だが、なかなか行こうとしないあなた
この姿では行きにくいとほざいているあなたへ
私は思いっきり蹴りをいれる
「絶対服従
 私の言う事はなんでも聞くのではなかったの」
私の言葉についに怒りだしたあなた
私の首をつかみ 絞め殺そうとしている
「そんな事ずっとやるわけねぇだろう
 それにお前には十分服従した
 だからお前がこの門に入り
 彼女を連れ戻して来い」
首をつかむ手に、さらに力をいれるあなた
ずっと冷静で、一切苦しそうな表情をしない私
「なぜ人間はこんなに醜いのか
 自分が宣言した言葉を急に撤回し
その分の代償を求めるなんて
なんて醜く、汚らしいのかしら」
私は鼻で笑い、あなたのふくらはぎ脹脛へ一発入れ
私の一撃でダウンするあなた
そして私は、あなたにふさわしい格好を捧げた
あの世では奴隷人の意味を持つ印の入った
黒いふんどしだけを
「あなたはこれで十分
 さぁ、落ちなさい
 永遠の苦しみが待つ所へ」
私は最後にあなたの背中を蹴り飛ばし
目の前の門へと通した
一番罪の重い者達が入る
出口の無い場所へ通じる門へと
そして、だんだんと朽ちていく体を見て
あなたは悲鳴をあげ 門から出ようと走りだした
「出せ!
 早くここから出せ!」
門に張られた結界を叩きながら
私へ懸命に訴えるあなた
そんなあなたを面白そうに眺め
「バイバイ、お馬鹿さん」と
手を軽く振って去る私

「さぁ、次は誰を連れてこようかしら」





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