一人の老人



山中の人里離れた所に住む 一人の老人
子は戦地で血を流し
愛する妻は病に倒れた
孤独の老人 視界を無くして常にあるは真っ黒な暗闇
今宵は雷雨 屋根から冷たい雨水が滴る

あぁ、天より見守りし神よ。あなた様は、なぜ私を苦しめる………

握り締める十字架に 老人の涙
胸が締め付けられるように苦しい 頭が割れるように痛い
老人は悟る 己の命はもうすぐ尽きる事を

雷鳴が鳴り響き 風と雨が老人の山小屋を襲う
微かに灯るランプの元で
神の名を唱えながら
終わりの近い老人 身を丸め涙を流す
何も見えない目を開く
暗黒の中から昔の懐かしき光景が灯幻機のように映し出され
まるで川のように流れて消えてゆく

あぁ、私の記憶が……記憶が………

遠のいていく意識
だんだんと残る記憶もあとわずか
視界がかすれてくる 痛みもだんだんと和らいでくる
握る十字架は床に落ちる
これでもう、私は終わる

荒れ狂う外に囲まれた小屋に隠れ住む
孤独の老人
誰も見守られることなく
この世より旅に出た




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