私は………



子供の時からだったろうか
背中に片方だけツバサが生え 赤い宝石を手にしたのは
背中にあるツバサは 天使のもののように見えるけど
  時が過ぎるにつれて
羽先が朽ちては 黒ばんでゆき
赤い宝石は 熱を持ち出して
怪しい光を灯しだす
私の両親は 最初は天使の子を授かったと喜んでいたのに
今や悪魔を見るような目で私を見て 遠ざかってゆく

どういて私にこんなツバサが生えたのだろう―――
そしてこの赤い石はいったい―――

誰もいない 荒れ果てた部屋の隅で
窓から見える満月を眺める
「私は天使なのか それとも悪魔なのか」
黒く染まり 朽ちてゆく羽を撫でながら
私は今夜も思いに耽る………

ツバサは真っ黒に染まり
赤い石は変わらず怪しい光を灯している
鏡に映る自分 見る限りに落ちぶれた堕天使のよう
一度も外の日を浴びることなく
唯一見る光は 月光とろうそくの灯火と赤い石が灯す光だけ
そして何一つ 口にする物もする事もなく
私の手や体がガリガリに痩せきっている

―――私はこのまま死んで逝くのだろうか
―――私は何のために生まれてきたのか

私は、自分の親を一時期だけ喜ばせるために生まれたのか?
それとも、神の悪戯なのか? 天使である私を憎んだ者の呪いか?
………だがもう、そんな事はどうでもいい
私は、知らぬうちに堕ちた堕天使 産みの親から見捨てられた子供
堕天使である以上 私には幸せなど来ない

嗚呼、哀れ見るように怪しく灯る赤い石よ
私はこのまま飢えて死ぬのだろうか
それとも、天から救いの手がのびて助けてくれるのだろうか

嗚呼、胸が痛くて苦しい
鋭い剣で突き抜かれたような痛みが
心臓を直接握りつぶされているような苦しみが
私の胸を支配していく
そして赤い石が再び熱を持ち出し
地へ落ちると共に解けて消えていった

―――なぜ?どうして溶けて消えた?
―――もしかして、私の死を告げているのか?

染み一つ残さず消えていった跡を私は見詰め
ひたすら胸の痛みに耐える

意識がもうろうとしてくる
痛みが徐々に強くなってくる
真っ黒に染まった翼の羽は ぽろぽろを散っていき
皮と骨だけの哀れな姿へとなっていく

そして今頃になって気づく
すべての原因はあの石にあり
あの石のせいでこうなってしまったということを
なぜもっと前に気づかなかったのか
どうしてそんな大切なことがわからなかったのだろうか
石の魔力せいだったのだろうか それとも自分が………

だけどもう 後悔する時間なんて無かった
ついに私は力尽き 息絶えてしまった
まだ解決できぬ問題を残したまま
大量の未練を残したまま
痛みと後悔と共に私は死んでいった………




[ Back ]

SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ