彷徨う妖精


   
狭い隙間を吹き抜け、
迷い、彷徨う私。
どこもかしこも同じような光景で、
高い石柱に、溢れる人間達。
すごいスピードで箱の乗り物が、
悪臭を吐きながら黒い石道の上を駆け抜け、
辺りの空気を掻き乱し、
空気を汚染していく。

「嗚呼、鼻が曲がってしまいそう・・・」

自然の磁波は、人間が発する電波で乱れて、
私の方向感覚は、ほぼ麻痺状態。
ここはいったいどこなのか。
出口はいったいどこなのか。
分からない。

「ねぇ、ここはいったいどこなの?
 どうして私を外へ出してくてないの?」

周りからの人間の言葉や騒音が絶えることがなくて、
冷静に木々達の、花や草達の救いの声が聞こえない。
聞こえるのは、
苦しむ声や、助けを求める声だけ。
隅っこの影で咲く花達は、
病んだような顔をして私を見ていて、
石柱が建ち並ぶ中で、
身を寄せ合って生きる木々達は、
懐かしき昔と故郷を永遠と語らいながら、
ため息をつき、流れる月日を眺めている。

「ねぇ、そんな目で私を見つめないで。
 そんな暗そうに、昔話を語り合わないで。
嗚呼、頭が痛い。胸が苦しいよ・・・」

錯乱する思考に、異様に歪む視界。
羽のリズムも狂い始め、
完全にどうにかなりそうになる。
上から下からと、容赦なく熱気が襲ってくる。
まるでここは、地獄のよう。。。

私の横をたくさんの人間が行き来している。
道端で咲いている花たちが人間たちに踏まれている。
光を得ようと伸ばした枝を人間たちが折っている。
無残に殺された鳩さん猫さんを、
嫌な顔をして放置している人間たちがいる。

煙を吐く赤い光が辺りを飛んでいる。
赤い光が草たちの所へ飛び込んでは、
草たちを焼き、苦しめている。
赤い光が人間とぶつかって、
人間の衣類や皮膚を焼いている。
私のように迷い込んだ精霊達を、
苦しめて、焼き殺している。

「−−−−もう嫌だ!
 我慢できないよ!!」

私の体にあの赤い光をぶつけて、
私の目を、耳を、鼻を、頭を、命を、
すべてを焼き払わないと、ここから出られない。

ここは生き地獄。
人間はごく自然かもしれないけれど、
私達にとっては地獄にすぎない。

私は意を決して赤い光へと飛び込み、
焼かれ苦しみながら、
この地獄を作った人間を
強く憎んで、散った。




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